ニュース・コラム
症状
だるさ
倦怠感は「身体的・精神的消耗を含む衰弱として特徴づけられる主観的症状 」と定義されています1)。評価が難しいですが、がん治療の倦怠感について研究がすすんでいるようです。
慢性的な症状として、からだのだるさ、疲れがとれない、眠りが浅いなどに悩んでいる方も多いと思います。当院の新患さんには予診表で症状を選択してもらいますが、肩こりや腰痛などのほか、身体が重だるいを選択する方が多い。こうした方の多くには、ある傾向(後述)があります。
漢方医学において、だるさをさまざまな病証ととらえますが、季節の変化にからめた表現として『素問』(紀元前200年頃の中国最古の医学書)風論篇第四十二の「風」による病について記載があります。現代も風邪として言葉が残っていますが、単にウイルスや細菌といったものを指すだけでなく、様々な病因や病証の表現に風が用いられます。風が五臓六腑に至ると大きな病となり、春の風病を「肝風」、季夏(土用)の風病を「脾風」といいます。
肝風の症状は、”多汗で風を悪み、よく悲しみ、色は蒼く、のどが渇いてよく怒り、時に女子を憎む、目の下が青い” とあります。”女子を憎む” は興味深い表現です。春は卒業入学や就職、移動の時期です。過度に悲しむなどストレス過多にならないよう注意ですね。
脾風の症状は、”多汗で風を悪み、身体が怠惰で、四肢を動かせず、色は黄、食欲がない、鼻が黄色い” とあります。身体がつかれやすい、怠い、重いわけです。思い当たる方も多いと思います。漢方では脾を消化吸収に関わる臓腑の変動と考えます。ひどい二日酔いで食欲なく、むくんで身体がだるい。できれば経験したくない症状ですが、同じ様な症状が常にあると思ってもらうとわかりやすい。これは辛いです…。以前、ランチタイムに某カフェに行くと、クリーム山盛りの甘くて冷たい飲み物を前に置いて、スマホを片手にウトウトしている若い女性をみかけました。食がすすまず、身体がだるい。だいたい血色が悪く、黄色くみえる方が多い。これが脾の症状です。こういう方は土用に風にあたるのをさけた方がよい。過剰に温暖か、極端な寒冷をさける、といえます。
暦が絶対ではありませんが、2024年の冬の土用の入りが1月18日、立春が2月4日でした。また、春の土用の入りが4月16日、立夏が5月5日です。入学祝いや歓迎会などの時期ですね。胃腸に不安のある方は、この時期、冷飲で胃腸に負担をかけること、むやみに発汗して風にあたって急に身体を冷やすことを避けましょう。
だるさには、当院の全身的な鍼灸が適していると思います。
- Bruera E, MacDonald RN. Asthenia in patients with advanced cancer. Journal of Pain and
Symptom Management 1988;3:9-14